輸出マーケティング基金(EMF):香港中小企業の輸出促進助成金ガイド
EMFとは
輸出マーケティング基金(Export Marketing Fund、EMF) は、香港貿易発展局(HKTDC)が管轄する輸出振興助成金制度で、香港の中小企業が海外市場に参入・拡大するための費用を最大50%まで補助する。年間上限はHKD 40万(約650万円)で、一定条件を満たせば上限リセットも可能。香港に拠点を置く企業が日本・韓国・欧米など海外展示会への出展や海外マーケティング活動を行う際の費用軽減に有効な制度。
1988年の導入以来、累計数万件の申請実績を持ち、香港のSMEエコシステムを支える代表的な補助金スキームのひとつ。
助成対象費用
EMFの助成対象となる活動・費用カテゴリは以下のとおり:
海外展示会・見本市出展:
- ブース出展料・会場費
- 展示物・什器の輸送費
- 展示会登録費・出展申請費
海外マーケティング・プロモーション活動:
- 海外広告(雑誌・デジタル媒体・屋外広告)
- プロモーション素材(カタログ・サンプル制作費)
- 海外バイヤーの香港招聘にかかる費用
ブランディング・知的財産:
- 海外での商標登録費
- デザイン・ブランディング制作費(香港外での登録を伴うもの)
オンラインマーケティング(2020年以降の拡充分):
- 海外向けECプラットフォーム出店費(Amazon、Tmall Global等)
- デジタル広告費(Google、Meta等、ターゲットが海外市場のもの)
対象外の主な用途
以下は助成対象外:
- 香港国内向けのマーケティング活動
- 既存の定常業務費用(電話代・固定オフィス費用等)
- HKTDCが主催する展示会への出展(別スキーム対象)
- 旅費・宿泊費(スタッフの渡航費)
- 既存商品の維持管理に関する活動
申請資格
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 企業登記 | 香港において合法的に登記された企業(有限公司等) |
| 中小企業基準 | 製造業:従業員100人以下 / 非製造業:従業員50人以下 |
| 事業継続性 | 申請時点で少なくとも1年以上の業歴 |
| 主要事業 | 香港に実質的な事業活動があること(ペーパーカンパニー不可) |
| 同一活動の重複申請 | 同一費用について他の政府補助金と重複受給不可 |
日系企業が香港子会社を通じて申請する場合も、上記要件を満たせば申請可能。ただし「実質的な香港事業」の要件に注意が必要であり、実態のある香港での事業活動の証明(従業員・事業実績・税務申告等)が求められる。
申請手順
Step 1:事前申請(活動実施前)
最も重要なルール:EMFは事後申請不可。活動実施前の事前申請が絶対条件。 展示会出展や広告実施の前にHKTDCのEMFポータルで申請し、承認通知を受けてから費用を執行する。承認前に発生した費用は原則として助成対象外となる。
Step 2:電子申請の手順
- HKTDCのEMFオンラインポータル(emf.hktdc.com)でアカウント登録
- 申請フォームに事業概要・活動計画・予算見積もりを入力
- 必要書類のアップロード:
- 香港ビジネス登録証(BR)
- 活動の見積書・招待状等
- 前年の財務諸表(または法人税申告書)
- 提出後、審査期間の目安は2〜4週間
Step 3:活動実施と書類保管
承認後に活動を実施し、領収書・請求書・出展証明書類等を厳密に保管する。
Step 4:精算申請(Reimbursement Claim)
活動完了後60日以内に精算申請を提出。支払証明・写真等の実績証明書類を添付する。審査後、承認された助成額がHKD建てで指定口座に振り込まれる。
審査のポイント
HKTDC審査官が重視するポイント:
- 海外市場への明確なターゲティング:「どの国・地域・顧客層を対象とするか」が具体的であること
- 費用の合理性:市場価格から著しく乖離した見積もりは再提出を求められる
- 事業との関連性:香港での事業活動と海外展開の整合性
- 過去の実績:継続申請の場合は前回の精算実績・成果が参照される
採択率は非公表だが、審査が適切に行われた申請の大部分が承認される傾向にある。不備・追加資料要求が発生した場合の対応の迅速さも審査の流れに影響する。
上限リセットの仕組み
EMFの累計助成上限はHKD 400万(従来はHKD 40万/年が累積上限)。2020年以降の改定で年間上限の考え方が見直されており、最新のリセット条件はHKTDC公式ガイドラインで確認のこと。
日本企業・展示会への活用例
EMFを通じて日本市場向け展示会への出展費用を補助した香港企業の典型的なパターン:
- 東京・大阪の食品専門展(Foodex Japan、フーデックス等)への出展:香港食品ブランドが日本の輸入バイヤー向けに香港産食品・飲料を展示。ブース費用・輸送費の50%をEMF補助。
- ジャパンITウィーク(東京ビッグサイト)への出展:香港系ITソリューション企業が日本法人開拓のため出展。英語・日本語の展示資料制作費も対象。
- Amazon Japan・楽天への出店費:海外ECプラットフォーム費用として申請。デジタルマーケティング費も含め補助を受ける事例が増加。
本記事は情報提供を目的としており、最新の補助率・申請要件はHKTDC公式EMFポータル(emf.hktdc.com)でご確認ください。制度は随時改定されることがあります。