DSEデザインと応用技術(Design & Applied Technology)完全ガイド
科目の概要
DSEデザインと応用技術(Design & Applied Technology、以下D&AT)は、製品設計・材料・電子技術・持続可能な開発を統合的に学ぶ実践的な科目です。毎年の受験者数は3,000〜4,000人程度。試験の60%を占める筆記(Paper 1+2)に加え、SBA(学校内評価)として設計プロジェクトのポートフォリオが40%を占める点が最大の特徴です。デザイン・工学系の大学進学を目指す受験生にとって、強力な武器になる科目です。
試験構成
Paper 1 — 製品デザイン理論(35%)
試験時間は2時間。選択式・短答式・図解問題で構成されます。
- 設計思考(Design Thinking): 問題定義→アイデア発散→プロトタイプ→評価のサイクル
- 材料科学(Materials Science): 金属・プラスチック・木材・複合材の特性と加工法
- 電子・電気回路(Electronics): 基本回路、センサー、マイクロコントローラーの基礎
- エルゴノミクス(Ergonomics): ユーザーと製品の身体的・認知的適合性
- 知的財産(Intellectual Property): 特許・意匠登録・著作権の基礎概念
Paper 2 — 設計プロセス論述(25%)
試験時間は1時間30分。与えられた設計課題に対して、思考プロセスを論述する形式です。
- 設計ブリーフの解釈: 課題条件を整理し、制約と要求仕様を明確化する
- コンセプト展開: 複数の解決案を提示し、比較検討の根拠を示す
- 評価と改善提案: 試作品の問題点を特定し、改善策を具体的に述べる
論述は英語または繁体字中国語で解答します。図・スケッチを答案に組み込む問題も出題されます。
SBA — 設計プロジェクト(40%)
SBAは2年間にわたる設計プロジェクトの記録をポートフォリオとしてまとめて提出する形式です。評価の比重が最も高く(40%)、ここでの差がLevel全体を左右します。
ポートフォリオの主要構成
| フェーズ | 内容 |
|---|---|
| 問題定義(Problem Identification) | リサーチ・ユーザー調査・ニーズ分析 |
| アイデア発散(Ideation) | スケッチ・コンセプト比較・判断根拠 |
| 試作(Prototyping) | 実物または3Dモデルの制作記録 |
| 評価(Evaluation) | テスト結果・ユーザーフィードバック・改善提案 |
提出物は印刷またはデジタル形式(PDF)で、ページ数・書式はHKEAAの規定に従います。
主要トピック
設計思考(Design Thinking)
スタンフォードd.schoolモデルを基盤とする「共感→定義→発想→試作→テスト」のサイクルが試験頻出です。ユーザー中心設計の考え方を理解し、各フェーズで行うべき活動を答えられるようにしておきましょう。
材料科学
- 金属: 鉄・アルミニウム・銅の特性(延性・硬度・腐食耐性)、熱処理
- ポリマー(プラスチック): 熱可塑性vs熱硬化性、リサイクル可能性
- 複合材: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の特性と用途
電子技術
基本的なオームの法則から始まり、LED・センサー・マイクロコントローラー(Arduino相当)の応用まで出題範囲は広め。実際に回路を組んだ経験があると理解がはるかに速まります。
持続可能な設計(Sustainable Design)
- ライフサイクルアセスメント(LCA)
- 3R(Reduce・Reuse・Recycle)の製品設計への組み込み
- エコデザインの評価基準
日本の技術・家庭科との比較
| 項目 | 日本の技術・家庭科(中学・高校) | DSE D&AT |
|---|---|---|
| 範囲 | 木工・金工・電気・情報基礎 | 設計思考+材料+電子+持続可能性 |
| 評価 | 定期考査+製作物 | Paper 1+2(筆記60%)+SBAポートフォリオ(40%) |
| デザイン要素 | 製作に集中しがち | 「思考プロセスの記録」が同等以上に重視 |
| 理論の深さ | 基礎的 | 材料工学・エルゴノミクスの用語レベルまで |
日本の中学技術科で電気・木工を学んだ経験はPaper 1の材料・電子分野に直接役立ちます。一方、DSE D&ATでは設計プロセスの可視化・言語化がより強く求められます。
SBAポートフォリオの評価ポイント
採点者が重視するのは「完成品のクオリティ」よりも「設計プロセスの説明力」です。
- アイデア段階でのスケッチの量と質: 1案だけでなく複数案のコンセプトを比較したことを示す
- 判断根拠の明示: 「なぜこの材料・形状を選んだか」を基準(コスト・機能・持続可能性)に照らして説明
- ユーザーフィードバックの組み込み: テスト段階でのフィードバックと改善の対応関係を明確にする
- 写真・図・グラフの活用: テキストだけでなくビジュアル資料でプロセスを補完する
PolyU工業デザインへの活用
D&ATのDSE成績は以下の学部・課程での評価が高い傾向があります。
- PolyU(香港理工大学)産業デザイン学部(Industrial and Product Design): D&ATのSBAポートフォリオをポートフォリオ審査の参考書類として活用できる
- HKU / HKUST工学部: 電子・材料の基礎知識が認められる
- 工業デザイン系専門学校: 日本・台湾・英国への進学でもD&ATの学習経験が評価される
Level 5対策
高スコアを目指すための具体的な戦略です。
- SBAに最優先で時間を投資する: 40%の配点を持つSBAは最大のレバレッジポイント。2年間の記録を丁寧に積み上げる
- ポートフォリオのドキュメントを英語で書く: 採点者への伝わりやすさで差がつく
- Paper 1の材料科学用語を体系化: 金属・ポリマー・複合材の特性を比較表で暗記する
- Paper 2のデザインプロセス論述を型化する: 「問題→制約→複数案→選択根拠→評価」の5ステップで論述する練習を繰り返す
- 実際に回路を作る: Arduinoや基本回路の実習経験がPaper 1の電子問題の理解を飛躍的に高める
D&ATは「デザインを考えること」と「技術を使うこと」の両方が問われる科目です。日本の理工系・デザイン系の素養がある受験生にとって、適切な準備でLevel 4〜5を狙える実践的な選択肢です。
よくある質問 (FAQ)
Q1: SBAのテーマは自由に選べますか? A: はい、SBAのプロジェクトテーマは学校の指導のもとで自由に設定できます。自分の興味関心(環境・医療・スマートホームなど)に合ったテーマを選ぶことで、ポートフォリオの説明力が増します。
Q2: 設計の実技(製作)が苦手でも受験できますか? A: はい。SBAは「完成品の品質」よりも「設計プロセスの記録と論述」で評価されます。製作物の完成度よりも、なぜその設計を選んだかの根拠記録が重要です。
Q3: Paper 2の解答言語は英語か繁体字中国語のどちらがよいですか? A: 自分が論理的に表現しやすい言語を選ぶのが基本です。技術用語は英語の方が正確に伝わる場合が多いため、英語での解答が一般的に推奨されます。
Q4: D&ATは数学が得意でないと不利ですか? A: Paper 1の電子回路(オームの法則など)で基本的な計算が出ますが、高度な数学は不要です。設計思考・材料科学・持続可能性のトピックは数学よりも理解と記述力が問われます。
Q5: D&ATと技術科(ICT)はどちらが大学進学に有利ですか? A: 目指す学部によります。デザイン・工学・製品開発系ならD&AT、IT・コンピューターサイエンス系ならICTが有利です。PolyU産業デザインを目指すならD&ATが最適です。
引用・参考資料
- Hong Kong Examinations and Assessment Authority (HKEAA). DSE Design and Applied Technology Syllabus and Assessment Framework. hkeaa.edu.hk
- HKEAA. DSE D&AT Examination Reports and Sample Papers (2022–2025). hkeaa.edu.hk
- HKEAA. School-based Assessment (SBA) Guidelines: Design and Applied Technology. hkeaa.edu.hk
- Education Bureau of Hong Kong. Technology Education Key Learning Area Curriculum Guide. edb.gov.hk
- Hong Kong Polytechnic University. BSc (Hons) Industrial and Product Design Programme Information. polyu.edu.hk
DSE・香港大学進学の1対1相談を希望の方へ
the editorial team 升學顧問チームは以下のサポートを提供しています:
- DSE選択科目の戦略(D&ATを含む選択科目の組み合わせ最適化)
- 香港八大(HKU / CUHK / HKUST / PolyU / CityU / HKBU / LingU / EdUHK)への出願戦略
- PolyU産業デザイン学部・工学部のポートフォリオ審査対策
- 個人陳述書(Personal Statement)の添削
お問い合わせ:info@hkguide.org
最終更新: 2026-04-19 · the editorial team AI編集チームが管理 · License: CC BY 4.0